アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
アイドルは、近くて遠い蜃気楼のような存在。
だからこそ、ファンはリアルでは味わえ無い甘い夢を見る。

いままで芸能人に興味が無かった私には、ファンの想いの深さを考えたことなど無かった。
 アイドル本人の現実の姿など関係なく、心の中で作り上げた理想像を思い描いてファンは追いかけるのだ。

 人が集まれば、良い人悪い人が居るように、ファンの中にも良い人悪い人が居るのだろう。
あの写真がスクープとして発表されたなら、 夢の中の恋人を奪った女と私は認定され、嫉妬・妬み・嫉みの対象となった末に何が起こるのか想像するだけでも背筋がゾワッとする。

「ごめんなさい、ちょっと力になって欲しくて……。あくまで仮定として、考えて欲しいんだけど、もしも、HIROTOと女の人の熱愛がスクープされたとして、その相手が私だったらどうなると思う?」

 付き合っていると告白しても信じてくれない松本さんと福田さん。ふたりに知恵を借りたい私は、HIROTOと出来上がっている妄想女の状態だ。
 こんな上司、自分だったらホント嫌だ。
 それなのにふたりは、真剣に考え始めてくれた。

「うーん、そうですね。スクープを見たら、やっぱりショックです。それで、お相手がオーナーだった場合。一般人女性って報道ですよね。そうなると相手の女って誰⁉って、ネットの掲示板とかにスレが立つでしょうね」

「そうそう、そうしたらネット民から特定班がでてきますね」

「特定班?」と、恐ろし気な響きに私は驚きの声を上げた。


 
 

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