アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 この先、起こることの対処方法なんて、素人考えでは限界がある。
 事務所に戻った私は、重たい気持ちを抱えていた。

 騒ぎが大きくなった場合、エステサロンmodérationに悪影響がでるのは容易に想像できる。私はオーナーとして働いてくれている従業員の生活を守らないといけない。そう、私事でみんなを路頭に迷わすわけにはいかないのだ。
 せめてもの対策で、お昼休み明けに近くのショップで急遽購入したスマホをエステサロンmodération広尾店・新宿店に送るためにバイク便に預けた。

 そして、誹謗中傷の対策で弁護士への相談電話を終え、細く息を吐き出した。
 心無いネットへの書き込み削除依頼がどれくらいの効力があるのか。おそらくは書き込みのスピードの速さに削除など太刀打ちが出来ないはずだ。

 時計の針は、もうすぐ午後5時になろうとしていた。
 この時間まで、大都から連絡が来ない。
 それは、記事の差し止めが出来ずに対策に追われている状態なのだろう。
 夕刊の入稿時間はとっくに過ぎて、印刷が終わり、ヘタをしたら駅の売店やコンビニの店頭に新聞が並び始めている時刻だ。
 それこそ、ネット記事は午後5時になれば待った無しで配信される。

 HIROTOと私が恋人同士だと言っても信じてもらえなったように、世間的にみれば、今は時めくBACKSTAGEのHIROTOとただのアラサー女の組み合わせなんて、違和感でしか無いはずだ。
 悪意のある記事になったら……と思うと、気鬱になってしまう。

 すると、スマホが着信を告げた。
 画面には「大都」という表示に私は慌てて通話ボタンををスワイプする。

「もしもし、大都⁉」

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