アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
表通りから一本入った閑静な住宅街の一角。ガレージ付きの一戸建ては、高い塀に囲まれている。
タクシーから降りた私は、インターフォンを押した。
カチッと施錠が外れる音がして『待っていたわ、今開けたから入って!』と機械越しに母の声が聞こえた。
門扉をくぐると、短い階段の先にある玄関ドアが開き、ショートボブの美魔女が顔を出す。
「おつかれさま、今日は大変だったわね。記事を見たけど、仲が良くて安心したわ」
リビングへ案内しながら母は訳知り顔でクスクスと笑う。
母が指摘しているのは、言わずもがな、大都にお姫様抱っこをされてる写真だ。気恥ずかしさも手伝い、視線を逸らしながら不貞腐れ気味に口を開いた。
「自分がスクープで夕刊の一面に載るなんて、考えたこともなかったわ。おかげさまで対応が大変だったのよ」
「そうよね。だから、マンションに記者が来ていて大騒ぎのはずよ。しばらくウチに居なさい。もしも、何かあったら赤ちゃんがかわいそうじゃない?」
そうだ、個人情報が駄々洩れの状態。きっと、マンションに帰っても茂木のような記者が何人もカメラを構えているかもしれない。でも、再婚して間もない母の家に置いてもらうのも気が引ける。
「そんな……悪いわ。どこか、ホテルにでも行くから気を使わないで」
「気を使ってなんていないわ。それにいままで、由香里には母親らしいことをしていなかったけれど、たまには力になりたいのよ」
「母さん……」