アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
『そんな優等生の回答もらってもなぁ。納得できるような、できないような……』

『そうそう、オレは、お姫様抱っこしていた女性との関係が気になってしょうがないんだけど、ここだけの話コッソリ教えてもらえないかな?』

 と、司会者は自分の耳に手を添え、好奇心いっぱいの瞳でHIROTOにナイショ話を促した。
 その様子を見た私は、テレビの中に居るHIROTOをハラハラと見守ることしかできない。

『あはは。ここだけの話って、この番組全国放送じゃないですか! まあ、おふたりに訊かれたら、話さないわけにはいかないですよね』

 そう言って、HIROTOは肩をすくめ、細く息を吐き出して話を続けた。

『ここだけの話、中3からダンスを始めたんですが、カッコよくなって初恋の人を振り向かせたいって、邪な気持ちからだったんです』

『思春期の男子が何かを始める動機なんて、そんなもんでしょう』

『ちょっと、待って! テレビの前のみなさん、初恋の人ってワードが出ましたよ。聞き捨てなりませんねぇ、そこを詳しく!』

 司会者のツッコミに、HIROTOはクシャリと笑う。
 これから語られる内容の期待と不安から、私の心臓は、トクトクと早く動き出す。

『そこは、サラッと聞き流してもらいたかったけど、仕方ないですね。実は……写真の女性が、初恋の人なんです。どうしても振り向いてもらいたくて、ずっと思い続けていました。そして、彼女に自分を見つけてもらいたくて、何年も頑張ってきました。彼女に出会っていなければ、今の自分はいなかったと思う。とても大切な女性です』


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