アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

これからもよろしく

 放送の影響で、”#HIROTO初恋”は、SNSでトレンド入り、ネットニュースも大賑わいだった。

 そのせいで、入院中の私へ、お見舞いに来れないと大都からお詫びのメールが届いた。
 産婦人科病棟にHIROTOが来たら、絶対に悪目立ちして、大騒ぎになるだろう。それこそ、ゴシップ記者に新たなネタを与え兼ねない。
 ゆっくり休ませてもらうためにも私は、『赤ちゃん共々元気だから、心配しないで大丈夫です』と、お見舞いをお断りさせてもらい、入院期間は穏やかに過ごした。

 そして、退院の今日からまた、母の家にお世話になって、安静期間は養生する予定だ。
 用意された部屋、清潔なシーツが敷かれたベッド。その脇の出窓にかかるレースのカーテンの合間から柔らかな日差しが振り注ぎ、飾り棚の上には涼し気な苔玉が置かれている。
 部屋の中は適度に空調が効いて、快適な温度だ。

 母が張り切って、私のために部屋を用意してくれたのだとわかった。
 
「由香里は、ベッドから動いちゃダメよ」

 張り切り過ぎの母から、行動制限がかかった。
あちゃー、せっかく退院したのに、これじゃ病院に居るのと変わらない。

「せめて、タブレット端末でお店の状況を確認するぐらいいいでしょう? ベッドで寝ているだけなんて、ヒマすぎておかしくなりそう」

 お店のスタッフからメールでの報告では、嫌がらせの電話も減り、予約も持ち直して来たと聞いている。けれど、どうしたってお店の様子が、気になってしまう。
 modérationは、私のすべてをかけた努力の結晶だ。自分の目で数字を確認したい。

「仕事が気になるのもわかるけど、お腹の子供のためにも無理は禁物。それに、スタッフを信じて任せるのも経営者として、必要なことよ」

 母のお小言をさえぎるように、ピンポーンとチャイムが来客を知らせ、「はーい」と、母がせわしなく部屋を後にした。
 私は、ここぞとばかりにタブレットの操作に取り掛かり、予約のチェックを始めグラフを呼び出す。幸いにも報告どおり、お店の予約は持ち直している。

「よかった」

 ホッと息を吐いたとこで、コンコンとノックが聞こえ、ドアが開く。

「あっ、まったく由香里ったら、ダメだって言ったのに仕事して! ヒロくんからも注意してやってよ」

 声につられて視線を移す。すると、母の斜め後ろに、大きな花束を抱えた大都が居た。

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