アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 部屋へ入る大都と入れ替わるように、廊下へ出た母が気を利かし、そっとドアを閉めた。

「大都……」

「退院おめでとう。由香里が大変なときにお見舞いへ行けずに、ごめん」

 大都は、私のベッドの横に立ち、大きな花束を差し出した。
 華やかに咲き誇るピンクの八重咲トルコ桔梗は、香りも控えめだ。妊婦である私のために選んでくれた心遣いがうれしい。

「ううん、大都こそ、テレビ出演とかあって、いろいろ大変だったわね。おつかれさまでした」

「あっ、見た?」

 耳を赤くした大都は、照れくさそうに頬を掻く。
 テレビで初恋宣言をされた私は、上機嫌で答えた。

「ふふっ、リアタイで見ちゃった」

「アレ見られてたとか……まいったな」

 そう言って、大都は耳を赤くしたままうつむいた。
 そして、気持ちを落ち着けるように大きく息を吐き出し、顔を上げる。

「由香里……」

 大都に真っ直ぐに見つめられ、私は少し緊張しながら返事をした。

「なに?」

「俺と一緒に居ることで、好奇の目を向けられるかもしれない。けれど、この先も全力で守るから……。まだまだ、未熟な俺だけど、ずっと一緒に居て欲しい」

 大都は私の左手に手を添えると、そっと薬指にキスを落とした。
 唇が触れた部分から熱が伝わり、私はドキドキと胸を高鳴らせる。
 そして、まだ熱が残る薬指には、キラキラと輝く指輪がはめられた。
 



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