アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 大都が、うちに初めて来たときの印象は、最悪の一言。
 生意気な年下の男の子を押し付けられたと憤慨していた。
 早く追い出したいと思っていたし、意地悪で苦手なタイプだと思っていた。
 それなのに、いつの間にか、大都のペースに巻き込まれ、気が付けば、大都を好きになっていた。
 そして、いまでは誰よりも大切な人。
 大都の広い胸に抱かれ、その温かさを感じている。

「ちょっと、緊張してる?」

「ああ、ライブステージのときは、いつも緊張するけど、今日は特別だから」

 BACKSTAGEのHIROTOとしての最後のステージが控えている。どうしたって、緊張するのは仕方ない。

「現地入り出来ないけれど、ネットのライブ中継で見るから」

 本当は現地入りして、臨場感を味わいたい。けれど、お腹の子の安全を思えば無理は禁物だ。

「見てくれるんだ。じゃあ、ステージの最後で由香里に愛の告白をしようかな?」

 そんなことを口にして、大都は、いたずらっ子のように笑う。
 もちろん冗談だとわかっているけど、私の頬は、かぁっと熱くなる。

「最後は、ファンのみなさんに感謝の言葉でしょう」
 
「あはは、そうだね ”明日から普通の男の子になります。”って、あっ、それとも、”もうすぐ、結婚します。普通のパパになります。”にしようかな」

 あははと笑いながら、綺麗なアーモンドアイが楽しそうに弧を描く。
 
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