アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
(おまけ)出産前ですが……
「なんか、ちょっとお腹痛いかも……」
朝食を食べようとダイニングの席に着いた瞬間、お腹に手をあてた由香里が、痛みを堪えるように眉根を寄せた。
それを聞いた大都は慌てて腰を浮かす。
「陣痛?」
「ん〜、そうかも……。でも、前駆陣痛って言うのもあるみたいだから、まだ、本当に陣痛なのか、はっきりわからないの。とりあえず、ごはん食べておく」
凄く心配したのに、あまりにもノンキな返答に大都の力は抜ける。予定日の前日となれば、いつ産まれても良いはずだ。それなのに陣痛かどうかはっきりしないなんて、肩透かしをされた気分だった。
「いただきます」
胸の前で軽く手を合わせた由香里が、野菜サンドをパク付き始めた。
食欲があるのは良いことだが、大都は気が気じゃない。
「お医者さんに連絡した方がいいんじゃない?」
「ふふっ、初めての出産は、時間が掛かるらしいから、慌てなくても平気よ。お医者様からお腹の痛みが10分間隔になったら連絡してって言われてるの」
出産に関する本は読んだ。だから、初産は時間が掛かるという知識はある。
けれど、陣痛かどうかもはっきりしない状態で、痛みがあるなんて……。
10ヶ月という期間お腹の中で子供を育て、その上、出産のときに痛みを伴い大変な思いをする。夫婦ふたりの子供なのに、女性ばかりが負担を背負い、男性は何も出来ないことを大都はもどかしく感じていた。
「俺に出来ること、して欲しいこと、何でも言って」
「じゃあ、シャワーを浴びるから、お言葉に甘えて髪の毛を洗ってもらってもいい?」
そう言って、由香里は、はにかんだように微笑む。
「シャワーなんて大丈夫なの?」
「入院したら、シャワーには思うように入れないじゃない」
これから出産となると、次にシャワーを浴びれるのは、お医者様の許可が出た後だ。
だから、由香里としては、今のうちにシャワーを浴びておきたい。でも、大きなお腹でシャンプーをするのは大変だから、手伝ってもらいたいのだ。
由香里の申し出を受け、大都はニヤリと口角を上げる。
「ん、いいよ。俺、シャンプーすんの上手いよ」
自信満々で言いのけた大都は、いそいそとバスルームに向かった。
Tシャツに短パン姿で、高めの温度に設定したシャワーのカランを上げ、浴室を温める。バスタオルを敷いたら準備万端だ。
「準備できたよ」
「はーい」
バスローブ姿で浴室に入った由香里は、大都が敷いたバスタオルの上に座り、バスタブに凭れた。
大きなお腹では、前屈みも仰向けもツラいことが多い。椅子に座るように凭れるのは、比較的楽な姿勢なのだ。
バスタブのフチに頭を乗せ、楽な体制になった。
大都は、美容師さんよろしく、由香里の髪を梳き、洗い始める。
「お湯の温度大丈夫ですか」
「はい、快適です」
「お痒いところございませんか」
「あっ、右の耳の後ろあたりが……」
「このあたりでよろしいですか」
「ふふっ、気持ち良いよ。髪洗うの上手だね」
「だろう?」
なにを隠そう、HIROTOプロデュースの美容室店舗立ち上げのために、良い機会だからと北川さんよりレクチャーを受けていたのだ。プロ仕込みのテクニックを披露して、大都はご満悦の様子だ。
髪の毛をすすぎ終え、ふぅ~と一息ついた由香里を大都はいたずらを思い着いた子供ように目を輝かせ覗き込む。
「何なら全身を洗いましょうか?」
ニヤリと口角を上げる大都。一方、由香里は焦りまくりだ。
「なっ!」
とっさに、バスローブの前を両手でガードした。
大きくなったお腹も、2カップ増えた胸も明るい場所で見られたくない。
「私、体は自分で洗いたい派なの! 」
「俺は洗ってあげたい派なの」
「大都のヘンタイ! スケベ! やらし〜」
「あはは、ヘンタイでスケベな俺と結婚したんだから、しょうがないよ。あきらめて」
そう言って、大都は由香里の頬を両手で包み込み、そっと触れるだけのキスを落とした。
「ばか……」
朝食を食べようとダイニングの席に着いた瞬間、お腹に手をあてた由香里が、痛みを堪えるように眉根を寄せた。
それを聞いた大都は慌てて腰を浮かす。
「陣痛?」
「ん〜、そうかも……。でも、前駆陣痛って言うのもあるみたいだから、まだ、本当に陣痛なのか、はっきりわからないの。とりあえず、ごはん食べておく」
凄く心配したのに、あまりにもノンキな返答に大都の力は抜ける。予定日の前日となれば、いつ産まれても良いはずだ。それなのに陣痛かどうかはっきりしないなんて、肩透かしをされた気分だった。
「いただきます」
胸の前で軽く手を合わせた由香里が、野菜サンドをパク付き始めた。
食欲があるのは良いことだが、大都は気が気じゃない。
「お医者さんに連絡した方がいいんじゃない?」
「ふふっ、初めての出産は、時間が掛かるらしいから、慌てなくても平気よ。お医者様からお腹の痛みが10分間隔になったら連絡してって言われてるの」
出産に関する本は読んだ。だから、初産は時間が掛かるという知識はある。
けれど、陣痛かどうかもはっきりしない状態で、痛みがあるなんて……。
10ヶ月という期間お腹の中で子供を育て、その上、出産のときに痛みを伴い大変な思いをする。夫婦ふたりの子供なのに、女性ばかりが負担を背負い、男性は何も出来ないことを大都はもどかしく感じていた。
「俺に出来ること、して欲しいこと、何でも言って」
「じゃあ、シャワーを浴びるから、お言葉に甘えて髪の毛を洗ってもらってもいい?」
そう言って、由香里は、はにかんだように微笑む。
「シャワーなんて大丈夫なの?」
「入院したら、シャワーには思うように入れないじゃない」
これから出産となると、次にシャワーを浴びれるのは、お医者様の許可が出た後だ。
だから、由香里としては、今のうちにシャワーを浴びておきたい。でも、大きなお腹でシャンプーをするのは大変だから、手伝ってもらいたいのだ。
由香里の申し出を受け、大都はニヤリと口角を上げる。
「ん、いいよ。俺、シャンプーすんの上手いよ」
自信満々で言いのけた大都は、いそいそとバスルームに向かった。
Tシャツに短パン姿で、高めの温度に設定したシャワーのカランを上げ、浴室を温める。バスタオルを敷いたら準備万端だ。
「準備できたよ」
「はーい」
バスローブ姿で浴室に入った由香里は、大都が敷いたバスタオルの上に座り、バスタブに凭れた。
大きなお腹では、前屈みも仰向けもツラいことが多い。椅子に座るように凭れるのは、比較的楽な姿勢なのだ。
バスタブのフチに頭を乗せ、楽な体制になった。
大都は、美容師さんよろしく、由香里の髪を梳き、洗い始める。
「お湯の温度大丈夫ですか」
「はい、快適です」
「お痒いところございませんか」
「あっ、右の耳の後ろあたりが……」
「このあたりでよろしいですか」
「ふふっ、気持ち良いよ。髪洗うの上手だね」
「だろう?」
なにを隠そう、HIROTOプロデュースの美容室店舗立ち上げのために、良い機会だからと北川さんよりレクチャーを受けていたのだ。プロ仕込みのテクニックを披露して、大都はご満悦の様子だ。
髪の毛をすすぎ終え、ふぅ~と一息ついた由香里を大都はいたずらを思い着いた子供ように目を輝かせ覗き込む。
「何なら全身を洗いましょうか?」
ニヤリと口角を上げる大都。一方、由香里は焦りまくりだ。
「なっ!」
とっさに、バスローブの前を両手でガードした。
大きくなったお腹も、2カップ増えた胸も明るい場所で見られたくない。
「私、体は自分で洗いたい派なの! 」
「俺は洗ってあげたい派なの」
「大都のヘンタイ! スケベ! やらし〜」
「あはは、ヘンタイでスケベな俺と結婚したんだから、しょうがないよ。あきらめて」
そう言って、大都は由香里の頬を両手で包み込み、そっと触れるだけのキスを落とした。
「ばか……」