アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
歯を磨きリップを付けた私は、リビングのドアを開ける。
「じゃあ、私、そろそろ仕事に行くわ」
リビングはコーヒーの良い香りが漂い、朝の柔らかな日差しが満ちていた。
マグカップを片手に窓際に佇む大都が振り返り、目を細める。
「ん、いってらっしゃい。気を付けて。俺、今日は仕事で遅くなるから」
「……いってきます」
そう言って、踵を返し部屋を出た。
なんとなくフワフワした気持ちのまま、エレベーターに乗り込み、独特の浮遊感を味わう。
「いってらっしゃい」と家を出るときに言ってもらったのなんて、どのくらい久しぶりなんだろう。
ひとり暮らしを始めたのが、高校に入って直ぐだったから下手をしたら10年以上前かもしれない。
日常にある、なんでもない一言なのに、それを聞いて自分の中で上手く消化しきれずに居る。
胸の奥が温かいような、それでいて、冷たい風が吹いているような感じがして落ち着かない。
自分で処理しきれない感情などいらなのに……。
「これだから、誰かと一緒に居るのは、苦手なのよ」
マンションのエントランスホールを抜け、外に出る。
温かな日差しが降り注ぎ、頬を撫でるそよ風は春の訪れを告げていた。
マンションを見上げると、眩しさで目を細める。
「苦手でもなんでも、居ていいって言ってしまった以上、責任は取らないといけないわね」
細く息を吐き出し、スマホを取り出した。
長年の友人の名前を見つけ、タップすると数回のコール音がして、「もしもし」と声が聞こえてくる。
「あ、愛理。ねえ、悪いんだけど、仕事頼まれてくれる?」
「じゃあ、私、そろそろ仕事に行くわ」
リビングはコーヒーの良い香りが漂い、朝の柔らかな日差しが満ちていた。
マグカップを片手に窓際に佇む大都が振り返り、目を細める。
「ん、いってらっしゃい。気を付けて。俺、今日は仕事で遅くなるから」
「……いってきます」
そう言って、踵を返し部屋を出た。
なんとなくフワフワした気持ちのまま、エレベーターに乗り込み、独特の浮遊感を味わう。
「いってらっしゃい」と家を出るときに言ってもらったのなんて、どのくらい久しぶりなんだろう。
ひとり暮らしを始めたのが、高校に入って直ぐだったから下手をしたら10年以上前かもしれない。
日常にある、なんでもない一言なのに、それを聞いて自分の中で上手く消化しきれずに居る。
胸の奥が温かいような、それでいて、冷たい風が吹いているような感じがして落ち着かない。
自分で処理しきれない感情などいらなのに……。
「これだから、誰かと一緒に居るのは、苦手なのよ」
マンションのエントランスホールを抜け、外に出る。
温かな日差しが降り注ぎ、頬を撫でるそよ風は春の訪れを告げていた。
マンションを見上げると、眩しさで目を細める。
「苦手でもなんでも、居ていいって言ってしまった以上、責任は取らないといけないわね」
細く息を吐き出し、スマホを取り出した。
長年の友人の名前を見つけ、タップすると数回のコール音がして、「もしもし」と声が聞こえてくる。
「あ、愛理。ねえ、悪いんだけど、仕事頼まれてくれる?」