アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
部屋のインターフォンが鳴って、渋々ドアを開けた。
そこには、記憶の人物とは重ならないイケメンが立っている。
ツーブロックマッシュスタイルをシルバー系のハイトーンカラーに染め上げた髪、黒いデニムパンツに革のライダーズジャケットの姿の彼は、見上げる背の高さだ。
どこぞのモデルか、アイドルか⁉
「真鍋 大都?」
綺麗な二重のアーモンドアイが、悪戯な色を浮かべ、メンズリップでも塗っているのか艶やかな唇の口角が上がった。
「なんで疑問形なの? まあ、いいや。これからよろしく」
どうぞとも言っていなのに、大都は私の横をするりと抜け、ズカズカと玄関に足を踏み入れる。上り框に大きなボストンバッグを置くと、黒革のドレープエンジニアブーツを脱ぎ上がり込んだ。
そして、大都は振り返り、まだ、ドアノブに手をかけたまま、唖然としている私に向かってどうしたの? というように手を広げ肩をすくめる。
いや、どうしたの? なんて大都はきっと思っていない。外国人のようなジェスチャーで、私のことをバカにしているのだ。
キッと睨んでいるのに、気に掛ける様子も無く、部屋の中を見回す。
「俺の部屋どこ?」
「ねえ、なんで来たの?」
「えっ⁉ タクシーで来たし」
「違う! ここまでの交通手段じゃなくて、この部屋に来た理由を訊いているんだけど」
両手を組み、家主としての威厳を醸し出してみたけれど、180センチを超す高身長の大都に168センチのわたしは見下ろされてしまっている。
そして、話しが微妙に噛み合わない。
「んー、セクシーな格好で出迎えてくれるキレイなお姉さんの部屋を、勝代さんに勧められたからかな?」
そして、ハタと自分の姿を見降ろせば、タンガを身に着けバスローブを羽織っただけの私。
怒りと恥ずかしさが相まって、かぁーっと、頬が熱くなる。