アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
玄関で愛理を見送った後、シャワーを浴びてナイティーに着替えた。何気なく、新しく家具を入れた部屋へ足を踏み入れる。
ダークブラウンの落ち着いた色合いを基調とした家具。ひとり掛け用のソファーのワインカラーが差し色で利いている。
「うん、いいんじゃない?」
ベッドに腰かけ、肌触りの良いシーツの上に指を滑らせた。
静かな部屋に衣擦れの音だけが聞こえる。
大きなため息を吐き、ぽすんとベッドに身を預けて天井を仰ぐ。
「愛理、結婚するのか」
結婚願望は無いけれど、置いて行かれるような寂しさが胸に広がる。
愛理は、「彼に何かあったとき、一番に駆け付けて、そばで支える人になりたい」と言っていた。その反対に愛理に何かがあれば、パートナーが駆けつけてくれるのだろう。
それは、結婚したからと言う理由だけではなく。信頼し合っているふたりだからこそ叶うことだ。
「私にもしも、何かあったら母親へ連絡が行くのか……」
母へ連絡が行っても忙しい人だから、入院手続きはしてくれるだろうけれど、その後の入院期間中の世話はあまり当てにできない。
「まあ、起きていないことを考えてもしょうがない……」
仕事も順調、素敵なマンションで、何一つ不自由のない暮らし。
それなのに、満たされない。
「これ以上の望んだら贅沢よね。みんな、何かしら不満を抱え、それに折り合いをつけて生きているんだから……」
細い息を吐き出し、目を閉じた。