アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「母さんは思い付きで行動する人だけど、それが君にとって良い影響を与えたんだ。良かった」

 ホッと息を吐き出すと、大都が好奇心旺盛に訊いてくる。

「お姉さんから見て勝代さんは、どんな母親だった?」

「元気で、いつも飛び回っているイメージで、親子と言うより友人のような関係かな」

「俺が勝代さんから聞いていたお姉さんの話しは、自分と違って、しっかり者でなんでもひとりでこなす自慢の娘だって」

「そう……」

 手がかからない良い子で居たのは、子どもなりの処世術だ。
 経営している美容室の店舗を増やし、その合間に恋をしている、そんな忙しい母親にわがままや甘えることなんで出来なかった。自分のやるべきことをこなし、母親にとっての良い子で居たのだ。
 いつの間にかひとりで居ることにも慣れ、それが普通になった。
 高校に入って直ぐに母の2回目の結婚。
 母にとっては結婚相手だが、私にとっては知らない男の人。お互い気を使いながら一緒に暮すぐらいなら、独りで暮すことを選んだ。
 それ以来、気楽に暮らしていたはずなのに……。

「眠くなった? なにもしないから、このまま眠っていいよ」

「ん……」

 大都はこどもを寝かしつけるときのようにポンポンと手を動かす。それが、妙に安らぎを感じられた。伝わる体温の温かさもあってトロトロと眠くなる。

 異性とベッドに入って、何もしないで眠るなんて初めてかも。それが、生意気な年下の男の子だなんて、私の情緒はおかしくなってしまったみたい。

 でも、いまは、温かな胸に抱かれて、甘えたがりの子供のように眠りに落ちていく。

 

 
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