アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

「あなたぐらいのイケメンだったら、何もわたしのところじゃなくても、どこぞのマンションの前で段ボールに入っていれば、キレイなお姉さんが拾って養ってくれるわ」

 バズローブの前を押さえながら、冷静を欠いた私は、昔読んだ漫画の話しをついうっかりしてしまう。
 そのうっかり発言に、大都は楽しそうに肩を揺らした。

「そんな面倒なマネをしなくても、お金持ちのキレイでセクシーなお姉さんの家に今、居るんだけど」

 なんだろう、まったく自分の思い通りに話しが進まない。年下の大都に振り回されている。

「とにかく、今日は泊めてあげる。でも、ベッドはひとつしかないの。君が寝るのはリビングのソファーだから、いいわね」

 大都は、「了解」と満足気にうなずいて、足元にあるボストンバックを持ち上げ、すたすたと足を進める。

「リビングこっち?」

「そうよ、私は着替えてくるから、くつろいでいていいわ」

「そのままの方が、セクシーでいいのに」

 片眉が意地悪く上がり、蠱惑的な視線を送られる。
大都は二十歳そこそこのはずなのに、成熟した大人の色気を醸し出していた。
 自分の意志とは裏腹に、ゾクリと腰のあたりに欲情の熱が溜まりだしてしまう。

この子、自分の魅力を熟知しているんだ。

その瞳から逃れるようにクルリと向き直り、自分の部屋のドアを開ける。
 

パタンとドアを後ろ手に閉じると、はぁ~っと盛大なため息をつく。
自分より年下の男に振り回されるなんて、私らしくない。
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