アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「って、言うのは冗談で、本当は怖かっただろ? 無理しないで、助けを求めればいいのに」

「まあ、何かあっても大抵は、ひとりで対処できるわ」

 虚勢を張ったわけじゃない。泣いたところで何の解決もしないことを知っている。小さい頃から自分のことは自分で何でもやって来た。

「そうだとしても、怖かっただろ?」

 意外な一言に驚いた私は、大都が何を思って言っているのか様子を窺うように顔を覗き込む。すると、大都はマスクを外し、柔らかく微笑んだ。
 途端に恥ずかしくなって、プイッと顔を逸らしてしまう。

「いい年した女が、怖いも何もないわ」

 意地っ張りな私をなだめるように、大きな手が頭をポンポンと撫でる。

「怖いに年なんて関係ない。力づくで何かされたら誰だって怖いはずだ」

 頭を撫でていた手が、するりと下りて肩に回り、大都の広い胸に抱き寄せられた。

「あれぐらい大丈夫よ」

 逃れようと大都の胸を押した私の手を大きな手が包み込む。

「大丈夫じゃない、大丈夫だと思いこんでいるだけだ。その証拠にお姉さんの手が冷たくなっている」

 自分でも気づいていなかったことを指摘され、言い訳さえも浮かばない。大都の胸に身を預けたまま、私は瞼を閉じた。
 
 大丈夫だと思っていたのは、強がっていただけなのだろうか。
 でも、自分のことは自分で対処するのが、一番確実だ。
 誰かに助けを求めても、助けてもらえなかったらどうするの?
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