アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「不自由を感じたことなんて無いから、変な心配なんてしないで」

「でも、お姉さんは自分で自分の範囲を決めて、そこから踏み出さないし、踏み込ませないようにしてるだろう?」

「そんなこと……」

 果たして無いと言えるのだろうか?
 自分のペースを乱されるのを嫌がり、テリトリーを決めて、その中に誰かを入れようとしない。
 それに、いろんなルールを決めて行動している。
 特に恋愛に関しては、範囲を決めて自分の決めたルールから、はみ出だす人は除外している。
 でも、自分を保つのに必要だったから、そうしていたのに……。

 最近、感じていた漠然とした寂しさは、自分が作りだしたものなのかも知れない。

 今まで、何の疑問も無く過ごしていたのに、突然現れた年下の男の子に、自分の心の深淵を見透かされたようで、戸惑うばかりだ。
 頭の中がぐちゃぐちゃで、言葉が出てこない。鼻の奥がツンとして、気を緩めると涙が出てきそう。
 
「焦らなくていいから、ゆっくり呼吸をして……」

 私の様子を察した大都の声が聞こえて来る。
 優しくされると余計に涙がこぼれそう。
 泣かないように唇を固く引き結んだ私の背中を大都の手が擦る。

「今度、時間があるとき、一緒に出掛けようか。普段と違うものを見せてあげる」

 大都の腕の中で、私は小さくうなずいた。
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