アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 自由奔放な母親の2回目の結婚のタイミングで、私は高校に入ってからずっと、一人暮らしをしている。
 恋に生きる母はバイタリティーの塊で、関東に17店舗の美容室を経営。おかげで、お金には不自由したことはない。それにエステサロン modération を構えるときも資金面や経営のノウハウについては協力してくれた。
 母親としては、残念な面も多いが、親としては良い方だと思う。

 元来、私は、ひとりでいるのが好きなタイプで、ひとり暮らしも抵抗がなかった。
 気楽な空間に誰かを部屋に招き入れるようなことは、ほんどない。
 特に、付き合っている男を入れるのは嫌。居座られるのも、世話をするのも面倒だからだ。

 私は、自分のペースで動きたい。好きな時間に食事をして、お風呂も寝るのも自分のタイミングがいい。
 誰かのために行動をするのに慣れていないのだ。

「それなのに、母さんたら、面倒をおしつけて……」

 クローゼットの扉を開け、ゴソゴソと中を漁る。なにせ、普段は一人暮らしの気楽さでタンガ1枚のほぼ裸族で寝ているのだ。

「たしか、旅行のときに買ったナイトウエアがあったはず」

 カップブラ付きのキャミソールにロングカーディガンの組み合わせの黒いナイトウエアは、さらりとした触り心地でお気に入りの一枚だ。

 身なりを整えたとは言えないけれど、仕事から帰ったら楽な格好をしたい。

「私の家の中では、私がルール!」

 気合を入れて立ち上がり、リビングへ向かった。
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