アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 体がキツイかどうかって?
 若さってすごいなって思いました。

 って、そんなことを言ったら、大都が吹き出して笑うと思う。
 でも、悔しいから言ってあげない。
正直なところ、体の節々がギシギシして起き上がれる自信がない。

「お風呂に入れば復活するはず……」

「ん、準備してくるから、横になってて」

 今度は、おでこにチュッとキスを落とし、大都はベッドから起き上がる。床に落ちている服を拾い上げ、それを手にしたまま裸でバスルームへ向かう。
 パタンとドアが閉まり、ひとりベッドの残った私は、枕に顔を埋めた。

「あー、もう」

 たくさんの恥ずかしさと少しの後悔を胸に抱え、甘酸っぱい感情の行き場を求めるように足をばたつかせ、ポスポスと枕を叩く。
 
 朝まで誰かと過ごしたり、甘い雰囲気でキスをしたり、慣れないことばかりで心がソワソワして落ち着かない。
 
 いままで、恋人だったはずの人と過ごしていた時間は、何だったんだろう。
 週末の夜、食事をしてホテルに行き、欲望を消化するようなSEXをして、家に帰る。
 たまに休日に会って、ドライブに行ったりすることもあった。
 付き合っていたから恋人だったと思うけど、恋をしていたかと問われたら、ソワソワと落ち着かない気持ちや一緒に居ない時間、彼のことで思考が埋め尽くされることなどなかったから「はい」と言えないかもしれない。

 自分の居場所を守るのに必死で、テリトリーに踏み込ませないような、浅い付き合いしかしてこなかったからだ。

「なんか、ダメな大人だなぁ」

 もう一度、ポスンと枕を叩いた。
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