アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「ほら、危ないから動かない」

「私は、お風呂にはひとりで入りたい派なの」

 ポカポカと大都の胸を叩いて抵抗しても、力強い腕から抜けだせない。
 私を腕に抱いたまま、大都はフッと笑う。

「俺は、ふたりで入りたい派。だから、あきらめて」

 大都はお姫様抱っこで私を抱えたまま、お行儀悪く足でドアを開いてバスルームに入り、お湯が張られたバスタブにざぶんと浸かった。

 大都のペースに乗せられ、思い通りにいかない私は、むぅっと不機嫌な様子を隠さずにいると、膝抱きに直され背中から大都に包まれた。
 お腹のあたりで手を組まれ、ドキドキと落ち着かない。ふぅと耳元に息がかかり大都の低い声がする。
 
「そんな可愛い顔をみせたら、襲われてもしょうがないよな」

 耳から入った艶のある声にザワリと粟肌が立つ。

「朝からバカなこと言わないで、無理だから」

「あはは、残念」

 そう言いながら、私の肩口に顔を寄せポソリとつぶやく。
 
「はあ、ずっとイチャイチャしていたい」

 急に可愛いことを言われ、力が抜ける。
 こう言うときに、ふと、若いなとか思ってしまうのは、アラサーの悲しい性かも。

「お休みが一緒だったら良かったのにね」

「ホント残念。でも、いきなり休めないし、しょうがない」

「こんど、休みが一緒になったらのんびりしましょう」

 なんて、いつになるかわからない先の約束をしてしまってから、「あっ」と、思った。
 1週間で出て行ってなんて言っていたのに、その先も一緒に居るつもりになっている。

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