アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
まだ、若く純粋だった頃の私は、3歳年上で穏やかで優しい柏原正人の存在を異性として意識し、机に並んでいるだけでドキドキと胸を高鳴らせていた。
今にして思えば、恋に恋をしていたような、誰しも1度は経験しているはずの思春期特有の感情だったのかも知れない。
ひとつの部屋の中で年頃の男女が揃えば、それはどうしたって衝動へと結びつく。
私たちは恋人同士のように過ごす時間が増えていった。いや、恋人同士になれたと思っていたのだ。
そして、私の無事に大学入試が終わり、1年が経ったある日、突然の別れがやって来た。
当時を思い出すと心についた傷痕が僅かに疼く。
電話番号が変わったのを知っているってことは、少なくとも1度は連絡を取ろうと思ったんだ。
手紙だけを残してアメリカへ行ってしまったくせに……。
正人との再会、予想もしていなかった出来事に、モヤモヤする気持ちを抑えつけように細く息を吐き出し呼吸を整える。
そして、にっこりと頬笑み余裕のある大人の振る舞いを続けた。
「あれから何年経ったと思っているんですか。電話番号ぐらい変わりますよ」
「……そうだよな。もう、8年いや9年も経つのか。それにしても由香里は綺麗になったな」
「ありがとうございます。先生もスーツがお似合いですよ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも、先生は止めてくれないか」
「……柏原さん、私、この後予定がありますので失礼しますね」
軽く会釈をして、立ち去ろうとした私を正人が引き止める。
「あ、積もる話もあるし、今度ゆっくり食事でもしないか? これ、連絡先、プライベートの番号も入っている」
名刺を差し出され困惑する。
でも、受け取らずにいて、ここで引き留められたら、約束の時間に遅れてしまいそう。
「お名刺頂きますね。それでは……」
「ああ、連絡待っている。また、会おう」
今にして思えば、恋に恋をしていたような、誰しも1度は経験しているはずの思春期特有の感情だったのかも知れない。
ひとつの部屋の中で年頃の男女が揃えば、それはどうしたって衝動へと結びつく。
私たちは恋人同士のように過ごす時間が増えていった。いや、恋人同士になれたと思っていたのだ。
そして、私の無事に大学入試が終わり、1年が経ったある日、突然の別れがやって来た。
当時を思い出すと心についた傷痕が僅かに疼く。
電話番号が変わったのを知っているってことは、少なくとも1度は連絡を取ろうと思ったんだ。
手紙だけを残してアメリカへ行ってしまったくせに……。
正人との再会、予想もしていなかった出来事に、モヤモヤする気持ちを抑えつけように細く息を吐き出し呼吸を整える。
そして、にっこりと頬笑み余裕のある大人の振る舞いを続けた。
「あれから何年経ったと思っているんですか。電話番号ぐらい変わりますよ」
「……そうだよな。もう、8年いや9年も経つのか。それにしても由香里は綺麗になったな」
「ありがとうございます。先生もスーツがお似合いですよ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも、先生は止めてくれないか」
「……柏原さん、私、この後予定がありますので失礼しますね」
軽く会釈をして、立ち去ろうとした私を正人が引き止める。
「あ、積もる話もあるし、今度ゆっくり食事でもしないか? これ、連絡先、プライベートの番号も入っている」
名刺を差し出され困惑する。
でも、受け取らずにいて、ここで引き留められたら、約束の時間に遅れてしまいそう。
「お名刺頂きますね。それでは……」
「ああ、連絡待っている。また、会おう」