アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 8歳も年下の大都。
 成人しているとはいえまだまだ若い。これから新たな出会いがあり、生活もめまぐるしく変わるはずだ。
 私との関係なんて、束の間のものだろう。

 一息ついたところで、ワインと前菜が運ばれてきた。

「年下の彼氏を持つふたりに乾杯」とグラスを合わせ、クスリと笑う。
 気の置けない友人の存在はありがたい。
 ワインで口を潤したあと、愛理がゆっくりと話し出す。
 
「由香里は結婚する気が無いんだったら、若い彼氏とゆっくりふたりの関係を育んでいけばいいじゃない? 焦って結論を出さないで、一緒にいる時間を楽しんでいるうちに、先の景色が見えてくるかもよ」

「そんなものかしら……」

「もしも、ダメになったらいっぱい愚痴を聞いて、一緒に泣いてあげる。そして、以前、由香里に言われたように”他にも男なんていくらでもいる”って言ってあげる」

 そうだった。前に愛理が夫の不倫で苦しんでいたときに、そんなことを言ったんだ。

「ありがとう。そうね、20代もあと少し悔いのないように楽しく過ごさないとね」

「はぁ、ホント20代もあと少しなんだよね。必死で頑張っていたけど失敗ばかりの20代だったなぁ。この先の人生が分岐する瞬間ってあるじゃない。でもその時は気付かないのよ。後になって振り返って、あのとき違う選択をしていたらもっと楽に上手くいっていたとか、考えても遅いのに……後悔することがよくあるの」 
< 66 / 211 >

この作品をシェア

pagetop