アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 やられっぱなしなのも、気に入らない。
 席に着いた私は、仕返しとばかりにエキゾチックなフルーツの香りがするワインをグラスに注ぎながら、大都を揶揄う。

「私だけ酔っぱらったら、大都は貞操の危機を心配しないとね」

 ふふっ、と笑みを浮かべ大人の女性の余裕を見せるが、それに屈する大都じゃない。
 テーブルに鶏チャーシューの乗ったプレートを置き、クッと口角を上げる。

「あはは、ナニ? 俺、襲われるの? うわー楽しみ(棒読み)」

「もう、感じワル」

 私は頬を膨らませ、グサリと鶏チャーシューにフォークを突き立てた。
 それを見た大都は、降参のように両手を肩の高さにあげ、笑いながらキッチンに逃げて行く。

「あはは、こわーい。ごめん、ごめん」

 ムカつく!
 浴びるほどワインを飲んで先に寝てやる!
 グビッとグラスの中のワインを飲み干し、注ぎ足そうとボトルを持ち上げた。不意に大都の手を大きな手に押さえられる。
 
「ピッチ早すぎ、悪酔いするから」

「これぐらい平気よ」

 可愛くない私は、つまらないことで意地になってしまう。そんな私をたしなめるのは大都だ。

「ダメだよ。体に悪い飲み方は許可出来ない。後で、襲われてあげるから我慢して」

 大都は、私の手からワインボトルを取り上げ、ニヤリと微笑む。
 私といえば、顔を紅くして、金魚のように口をパクパクとさせたまま、言葉が出てこない。

 くやしい~!
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