アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
ひと悶着あったけど、無事に食事を終えた私は、食器の片づけをしている。とは言っても、食洗器があるから、下洗いだけの簡単なものだ。
 いい気分転換になるから片づけは嫌いじゃない。

 キッチンカウンターの向こうにあるダイニングテーブルの上に大都はノートパソコンを広げ、真剣な表情でポチポチと操作している。
 普段かけていないブルーライト軽減用のメガネをかけていて、メタルフレームがシャープな顔のラインに似合っていた。
何をしてもかっこいいとか、ズルい。

 キッチンの片づけが終わり、大都に声をかける。

「ねえ、何か飲む?」

 ノートパソコンから顔を上げた大都がふわりと微笑む。

「ん、今はいらない。ありがとう」

 私は、冷蔵庫から炭酸水を取り出し、それをグラスに注ぐ。グラスを片手にリビングのソファーに腰かけ、TVのリモコンのスイッチを入れた。

 ふたりで居るからと無理に同じものを見たり、同じことをするのではなく、空間を分け合うように、それぞれ自分のことを自由にしているのが、心地良い。

 ソファーの上で膝を抱えて、趣味の映画をひとりで観ていても、ひとりじゃない。

こうして一緒に居たら、いつかこの先の景色が見えてくるのだろうか?
今は、温かな時間が少しでも長く続けばいいなと思っている。

 
 
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