飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「あの……?」


 そろそろ用件をお願いしたいです、という意味を込めて窺ってみる。

 中志津くんは視線を横にそらして「あー……」と、迷いを含んだ声を出した。

 そのまま少し考えた後もう一度私の目を捉えると、なにか決心したように目に光を宿らせた。

 
「……月寄って、」

「キョーンッ!」


 中志津くんの言葉が、ひときわ明るい女の子の声によって遮られた。

 
「一緒に組も~……って、月寄さん?」

 
 不思議そうな顔をする八木澤さんが、中志津くんの後ろからひょこっと顔を出した。


「あれ?お取込み中?」

「……」

 中志津くんは言葉を飲んでしまって、私はどうしたらいいか分からずに、とりあえず笑顔を作ってみる。

「ちょっと紗英~! 一人で勝手に行かなー……っ」

 後ろからきた入江さんが私の顔を見た後に、私の制服の裾を掴む中志津くんの手を見て硬直した。

 それを見てハッとする。

 これはあらぬ誤解を与えちゃうんじゃ……⁉ 

 私は不安になって中志津くんを見た。


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