飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「大さじ1くらいだよ! 計量スプーンがあるから……あっ、でも鍋のお水の量を測ってないから、」

「あーいい、いい。 洗い物増えるだろ。 測るの面倒だし。 こんなもんでしょ」

 (しん)がジャッと適当に塩を入れた。

「あぁっ!」

「じゃー麺を茹でてる間に冷蔵庫にある食材でー……」

「あっ、待って! 時間測らないと……っ」

「大丈夫だって。 なんとかなるから」

「えっ、でも、」

「考えるな。 感じろ」


(しん)はそれっぽいことを言ってグッと親指を立てた。


「えぇ……?」


 どんなメニューでもレシピがないと作れない私は、味付けも茹で時間も適当な(しん)の料理にあいた口が塞がらない。


「……凛はいつも必死だよな」


 (しん)がなんでもないことのように言った。


「えっ?」


 いつも必死……?


「体育の準備運動も、国語の朗読も、朝の挨拶も……必死になんなくていいとこまで一つ残らずぜーんぶ、必死」


 思ってもないことを言われて、かたまる。

 話しながら(しん)は適当に千切ったキャベツとベーコンをフライパンに入れて、思い出したように油を足した。

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