飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
(しん)ならそうするかなって」


 中志津くんは視線を私の方に移して、私の目をじっと見た。

 その目は、突然出てきた『(しん)』の名前にかたまる私を、試すような目だった。


「えっ……?と……」
 

 ……そうだ

 中志津くん、(しん)が行方不明になった時も私に何か知ってる?って聞いてきた。


「なんで、(しん)……夏宮くん?」

「……」


 射抜くような目に、少し怖くなる。
 

「……わかんないならいい」


 そう言って中志津くんは私から視線を外して、紙パックのストローの袋をいじり始める。


 ……は!

 (しん)がいたら、班に私を誘うだろうってこと?

 確かに、(しん)ならぼっちで困ってる私に気付いて誘ってくれるかもしれない。

 そっか。

 中志津くんは(しん)の代わりに、なんの接点もないぼっちの私を見越して、助けてくれたんだね……⁉

 私は体をバッと中志津くんのほうに向けた。


「ありがとうございます……!」
 
 
 私は仏様に拝むように、中志津くんに向かって手を合わせた。


「……?」


 中志津くんは不思議そうにしながらも私に軽く会釈を返してくれた。


 なんだ、ただのいい人だった。

 私はほっと胸を撫で下ろして、再び空を見上げた。

 そういえば(しん)は、中志津くんとあんまり仲良くなりすぎるなって言ってたなぁ。

 今でもいまいち理由がわからない。
 
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