飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ビクッと肩を震わせた古木くんがおずおずと振り返る。

 
「え……僕?」

「うん」
 

 夏宮くんはにっこりと笑顔を浮かべている。

 
「……っ、おいおい夏宮ぁ」

 湯川くんが夏宮くんに肩を組み、半笑いで呆れた声を放った。

「かわいそうなことしてやるなよ。古木が来たら場がしらけるだろ?」

 湯川くんに「なぁ?」と同意を求められた清水くんが「それな」と苦笑する。

「そんなことないよ。古木、前に『ただれ女2』攻略したって言ってたよな」

 それを聞いていた近くの男子が「え!?」と声をあげた。

「ただれ女って怖すぎてPCでしか買えないっていうあれ⁉」

「あ……うん」

 古木くんは少し頬を赤くしながら頷いた。

「えー‼すっげぇ‼」「怖くなかったの⁉」「俺広告だけでもうトイレいけなくなったわ」

 クラス中の男子から尊敬の目を寄せられた古木くんは恥ずかしそうに、でも少し得意げに「大したことないよ」と言って眼鏡を直した。

 何も口を挟めなくなったらしい湯川くんたちは居心地悪そうに後ずさる。

「俺とキョンが進められなくなったら古木に進めてもらうからさ」

 そう精悍な顔つきで言った夏宮くんに「どんだけ他人任せだよ」と中志津くんが静かに突っ込むと、クラスのみんなが笑った。

 さっきまであんなに空気が悪かったのに、今はみんな心から楽しそうに笑ってる。

 夏宮くん……ほんとに太陽みたいな人だ。

 男女問わずモテる理由がよくわかる。

 私さっき、羨ましい!なんて思ったけど……そんなこと思う資格すらない。

 なんっておこがましいんだ、私は……!

 ひどく恥ずかしくなってきた超凡人の私は、教科書を読むふりをして自分の熱くなる顔を隠した。

 眩しい。私には眩しすぎます、夏宮くん……!

 

 
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