飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「……月寄さんって……意外と鋭いんだ」


 入江さんをまとう空気が変わった。


「ポンコツの割に」

「⁉」


 私は鞄をドサッと落とした。

 ポンコツ⁉ いま、入江さん、ポンコツって言った⁉


 入江さんは私の様子を見てフ、と笑った。


「いや分かるっしょ普通。 なんでみんな勘違いしてんのか不思議でしょうがないわ」

「えっ?う、そ、え」


 入江さんはうろたえる私をよそに私の落とした鞄を拾ってパンパンとホコリを払ってくれる。


「あたし、嘘つくやつって嫌いなんだよね」

 入江さんの切れ味のいい言葉にドキッとした。

 嘘……つくやつ……?

「月寄さんって取り繕ってる感あったからさ。 正直ダサいなって思ってた。 ありのままで勝負しろよって」

 うっ。 刺さる。

「その割に顔良くてモテモテだから、どうせみんなのこと下に見てんだろうなって思ってたし、あたしと話すとき絶対一瞬固まるし……あー、あたしと話すの嫌なんだろうなって思ってた」

「え⁉ ち、ちが」

「うん。 違ったんだ」


 入江さんはフハッと笑った。


「ごめん。 勘違いしてた。 血が噴き出るほどのケガしながら人助けしようなんてお人よしにも程があるし、バカすぎ。 なんか私が思ってた以上に、ポンコツだったわ」

「そ、うん……うん?」


 褒められてるのか貶されてるのか分からない。

 それでも入江さんは優しく笑って私を見てくれてるから、嫌な気持ちにはならない。

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