飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 キッチンの窓には鉄格子が付いていて、人間は到底通れる幅じゃないけど、猫ならギリギリ通れそうだ。

 窓をのぞくと、その先にあるのは、外。

 ここは二階だからそれなりの高さがあるけど、猫の身体なら下の木を伝って出られなくもない。


「……」


 私は窓枠に手をついて外を眺めたまま、硬直した。


 もしかして、

 出ていった……?


 力が抜けて、ペタンとその場に座り込む。


 ……どうして?

 こんな突然いなくなるなんて

 私との生活が嫌になったとか……?

 ううん、今朝出かける時だってそんな素振り、全然……

 ……そうだ。

 餃子。

 餃子食べたいってメッセージは、絶対(しん)からのものだった。

 (しん)はここで夕飯を食べる気があったはず。

 じゃあなんで?

 なんでいないの?

 いったいどこに……


「……っ」


 どうしようもなく胸がざわついて、咄嗟に(しん)の服をかき集めて、外へと駆け出した。



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