飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ……忘れもしない。

 私はあの日、夕方になっても帰らないおばあちゃんに、遅いなぁ、また近所のおばさんと話し込んでるのかな、なんて考えながらテレビを見ていた。

 家の電話が鳴って、訳も分からないまま駆け付けた病院で、動かなくなってしまったおばあちゃんを見た。

 買い物帰り、一人田舎道で倒れたおばあちゃんは、通りがかった人が見つけた時にはもう息を引き取っていたらしい。

 私が呑気にテレビなんか見てる間に、おばあちゃんは苦しんで、一人で、逝ってしまった。

 
「……っ」


 その時の気持ちが鮮明によみがえる。

 生き物はみんな、いつか死ぬ。

 本当に何の前触れもなく、突然いなくなっちゃうことがある。


 呼吸が浅くなって、私はマイナスな考えを振り払おうと首を横に振った。


 大丈夫、(しん)はいる。 きっといる。

 

 ドンッ

「!」


 前からきた人とぶつかってしまって、私は後ろによろけた。


 
「あっ、すいませーん…………あれー?」


 男の人の声に顔をあげて、私は既視感のあるその顔に身体を強張らせた。

 
「あー! 前に会った子じゃん!」


 釣り目に金髪、ピアス。
 

『未来の彼女がいたんで声かけちゃいました~』
 

 前に(しん)が噛みついた、男の人。


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