飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「……ねぇ。 門限破って、なにを探しに行ってたの」

「っ、だって……っ、」


 家に(しん)がいないって気付いて不安に襲われた時のことを思い出して、じわ、と目尻に涙が滲む。

 
(しん)に、何かあったのかと、思って……っ」

 
 私の震える声に気付いた(しん)が顔をあげる。


「俺になんかあったら困るってこと?」


 (しん)は熱を帯びた目でまっすぐ、まっすぐに私の目を見る。
 

「っ、……こ……まる……」


 私の返事を聞いた(しん)は小さなため息をついて、再び床の方に顔を向けて「なにそれ」と呟いた。


 私の手首を持つ(しん)の手を見ていたら、胸の奥の方に、込み上げてくる。


 ネックレスを直してくれた、優しい手。

 私を抱き止めてくれる、頼もしい手。

 何度も私の頭を撫でてくれた、あったかくて安心する、(しん)の手。


 ……できることなら、このままずっと離さないでほしい。


 (しん)になにかあったら、困る。

 すっごく困る。

 だってもう、私は、



「……俺のこと、大好きじゃん」
 


 思ってる言葉をそのまま(しん)が言ったから、心臓がドクンッと飛び跳ねた。

 顔がカァッと熱を持って、咄嗟に掴まれてない方の腕で顔を隠す。



「……」



 そんな私を、再び顔を上げた(しん)が見た。

 
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