飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「さっきの牛、めっちゃ凛の顔じーっと見てたよね? あれぶちぎれの顔だよ! 他にもたくさん乳しぼりした人いんのに、凛だけにキレるとか! どんだけだよ! あはははは」

「うぅ……私の何がいけなかったんだろう……」

「凛の緊張具合に無性に腹立ったんじゃない? めっちゃわかるわー」

「え⁉ 聞き捨てならないよ⁉」
 
「あっはははは! も、お腹痛い……!」

「そんなに笑う……?」


 苦しそうにするセイラを横目で見ながら、ようやく乾いてきた髪を触る。

 さっき水道で髪の毛を濡らしてすすいだけど、相変わらず濃厚な牛乳の匂いはプンプン漂ってくる。

 なんて日だ。

 こんな状態でお昼のジンギスカンを食べに行ったら、最終的にどんな匂いになってしまうんだろう。


「あはは、もう、凛サイコー」


 ……でも

 こうして笑ってくれる友達がいるから、楽しい。

 全部、楽しい。


「フフ」

「笑ってる場合かっ、」

「あははっ、それセイラが言う?」
 

 二人で小突き合っていたところを、


「……わっ!」


 突然後ろから髪をすくわれた私は素っ頓狂な声をあげた。


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