飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「! ネックレス⁉」


 どれだけ探しても見つけられなかった月と太陽のネックレスが、揺れてキラッと反射した。
 

「うそ! え⁉ どうして⁉」 

《玄関の靴ん中に入ってた。 あ、あと前に新しく買って失くしてたチェーンもソファの下で見つけた》

「う、わぁ~……!」


 もう、もう絶対戻ってこないと思ってた。

 感動で胸が苦しくなる。


「ありがとう、(しん)……!」

《ふ。 どういたしまして。 あー、泣くなよ》

「っ、っ、うん……っ」


 わかっていても溢れそうになってしまうそれを、私は懸命に歯を食いしばって耐える。


《……あー、もうすぐ昼だよな。 午前中は何したの?》


 (しん)が空気を変えようと違う話題に移してくれる。

 私は洟をすすって今日あったことを思い返す。
 

「……あっ、さっきね、牛の乳しぼりしたよ」

《お。 ちゃんとできた?》

「で、でき、うーんと」

《できなかったんだな》

「……フフッ」
 

 ごまかして笑うと、(しん)も笑って《牛に蹴られでもした?》と聞く。

 「惜しい!」と事の顛末を話そうとした、

 その時だった。


「…………(しん)?」


 背中側から声がした。

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