飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「っだぁーもう!」


 耐えかねた(しん)がキョンの手から逃れて私に抱きついてきた。


 ボフンッ!


「…………わーお」


 人間になった(しん)に、キョンが静かに驚いた。

 (しん)は私を抱きしめたまま私の背中側に回って、そこからキョンに抗議する。


「もういいだろ! 今日は帰れよ!」

「やだ」

「なぜ!」

「飯食って帰るって言っちゃった」

「あ、今日はたこ焼きパーティー、略してたこパです!」


 キョンに続けて私が買い物袋を持ち上げて言うと、(しん)が私の肩に大きなため息を吐いた。


「……食ったら帰れよ」

「食ったらな」


 キョンが「おじゃましまーす」と言って靴を脱いでリビングに向かう。

 不服そうな(しん)が、余裕そうなキョンの背中をむぅ、と見てる。

 ……ペースを乱されてる(しん)って、新鮮。

 
「フフッ」

 つい笑いがこぼれた。

「こら。 なに笑ってんだ」

 (しん)は後ろから抱きしめたまま私の顔を覗き込んで私の顎を持つ。

「ふへへ」

「そんな楽しい?」

「フフ、うん!」

「……そっすか」

 能天気な私に力を抜いた(しん)は、ハー……と息を吐きながら私の肩に頭をもたれさせた。

 

< 186 / 327 >

この作品をシェア

pagetop