飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 そろそろ戻ろう、という(しん)の声が聞こえて、私は慌ててトイレに逃げた。

 バタンッとトイレのドアを閉めて、そのまま動けなくなる。


 『平気平気 大丈夫だから』


「……」


 胸が、ザワザワと騒ぎだす。

 
 ……(しん)にとって

 大丈夫じゃないことが起きてる……?


 走ったわけでもないのに速くなる心臓の音が、私の混乱する脳にガンガンと鳴り響いた。

 
 (しん)は、神様のいたずらで勝手に猫になったわけじゃない。

 だれかが意図的に(しん)を猫にした。

 (しん)はそれを知っていて、敢えて言わずにいた……?


 どうして……?

 
 わからないことをぐるぐると考えていると、リビングの方で物音がして、ハッと我に返る。

 あまりトイレに長居すると心配されちゃう。 もう出なくちゃ。

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