飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 まだザワザワする胸を押さえながら、私はトイレを出た。


「あ、凛。 キョン帰るってー」


 見るとキョンはすでに荷物を持って、靴を履いてるところだった。

 
「あっ、もう、帰るの?」


 私はパタパタと玄関の二人に駆け寄る。
 

「帰ってほしくない? じゃあもうちょっと……」


 キョンがよいしょ、と靴を脱ぐ仕草をすると、(しん)がニコニコしながら「お帰りください」と肩を押した。

 それにキョンが噴き出して笑いながら「はいはい」と改めて靴を履き直した。


 もうちょっといてくれてもいいけどな、なんて思いながら「気をつけて帰ってね」とキョンの背中に声をかける。

 するとキョンは振り返って、口角をふ、とあげた。


「……(しん)がこんなに必死になってんの、久しぶりに見たかも」

「え?」

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