飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 私のお父さんは日本から遠く離れた貧しい国で、なるべく少ない賃金でたくさんの人を診て助ける仕事をしている。

 物心つく頃には、お父さんは海外で仕事していることが当たり前だった。

 お母さんを小さい頃に事故で亡くしていた私は、隣町でおばあちゃんと二人暮らしをしていた。

 おばあちゃんがいたから、なんの不自由もなく、楽しく幸せに暮らしてた。

 そのおばあちゃんが去年、突然亡くなった。

 心不全だった。

 お葬式を終えて、突然のことに呆然としていたとき。

 お父さんは眠るおばあちゃんの前で「仕事を辞めて、日本で凛と暮らすよ」と言った。

 生前おばあちゃんは、凛のお父さんは誇らしい仕事をしているんだよ、といつも嬉しそうに話していた。

 言われなくてもお父さんの仕事がどれだけ尊いことか、必要とされているか、私は理解してるつもりだった。


「私、一人暮らししたい」


 気付いたらそう口にしていた。

 当然お父さんは猛反対。


「大事な高校生の娘の一人暮らしを許す親がどこにいる!」

「大丈夫だもん!ご飯も掃除も洗濯も全部おばあちゃんに教わったし!節約だってちゃんとできるよ!」

「そういう問題じゃない!」

「お父さんと暮らすなんてやだよ!いびきうるさいもん!」

「うっ、しょうがないだろ‼鼻炎持ちなんだよ‼」
 

 それから私とお父さんは大喧嘩。

 積みあがっていた座布団を投げ合って、しまいには木魚まで持ち出そうとしたとき。


< 22 / 327 >

この作品をシェア

pagetop