飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「紗英も(しん)も付き合ってるって言ってたんだから、疑う余地がないよ」

「……いや、でも(しん)は……、」


 キョンが私の顔を見て何か言おうとして、やめた。


「……?」

「……いや、やっぱ……うん……」


 ひとりで何か納得して飲み込んだらしいキョンが、立ち上がった。


「……とにかく、何かあると思う」

「何かって?」

(しん)が昔言ってた。〝紗英はかわいそうなやつなんだ〟って」

「え……紗英が、かわいそう……?」


 紗英と言えば、素直で明るくて、天真爛漫で、いつも笑顔で可愛くて……かわいそうってイメージは全くない。


「……それに、俺が知ってる(しん)は、一途だよ」



 『意外と一途だったりして』



 キョンの言葉が、いつか(しん)が冗談交じりに言っていたセリフとリンクしてドキッとする。


「なんかある。絶対」


 キョンは、迷いのない声で私に言った。

 そしてそのまま、何も言えずに固まる私を残して屋上をあとにする。

 一人ぼっちになった私は、無意識に胸元の、ペアではなくなってしまったネックレスを触る。



 『凛が大切だから』



 ねぇ、(しん)

 


「どこまでがほんと……?」




 
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