飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
(しん)が行方不明⁉」


 教室の中からとんでもないセリフが聞こえてきて、私は口にしようとしていた朝の挨拶を飲み込んだ。


「どういうことだよ、キョン!」

 
 クラスの男の子にそう問いかけられた中志津くんは、自分の席に鞄を置いて、神妙な面持ちで説明を始める。


「……昨日待ち合わせ場所に来なくて、連絡もつかないから心配になって家に行ったら、帰ってきてないって。 それからいろんなとこ探しに行ったけど見つからなくて、そのまま……今もまだ連絡がつかない」

 そのとき、隣にいた八木澤さんが崩れ落ちた。

「心……っ、どこ行っちゃったの……」

 そう言って泣き始めてしまった八木澤さんの背中を、入江さんがさすって慰めている。

「あー、家出じゃね⁉ どっかで遊んでるとか」

「心はそんなタイプじゃない。 心の家のおばさんが、夕方までに帰らなかったら警察に相談するって」


 『警察』という単語にことの重大さを理解し始めた教室が、騒然とする。

 
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