飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「ずるいよ凛~。いいとこどりじゃーん」


 私は自分にも言い聞かせるように首を左右に振る。


「ダメ、ダメだよ。心、猫にされてずっと大変そうだった。自分の寂しさを埋めるために心をしばりつけちゃいけない」


 言いながら、心で寂しさを埋めようとしていた自分自身にもグサグサと刺さっていく。


「でもさぁ、心、全然言うこと聞いてくれないんだよ。もう私たち小さい頃からずっと一緒で運命なのに、好きだよ、彼氏になってって言ってものらりくらりとかわされてぇ。だからもう強行突破しちゃったよね。心の水筒にお薬ぽちゃーんって入れちゃった!フフッ。それがちょっと試験中の弱いくすりだったからか、猫になったらしばらく動けなくなるって聞いてたのに逃げられちゃってぇ。ほんと焦ったぁ」


 もはや、返す言葉が見つからなかった。

 やっぱり普通の思考回路じゃない。

 
「でもね、今はちゃんと私のところに帰ってきて彼氏になってくれたし!凛の可愛さにちょっとクラッとしちゃったみたいだけど、許してあげたんだよ。優しいでしょ?今度浮気したら浮気相手になにしちゃうかわかんないかもーって言ったら、フフ、なんて言ったと思う?フフフ、『俺は紗英のものだよ』だってー♡キャー!」

 なにしちゃうかわかんないって……

「脅したってこと……⁉︎」

「えぇ?人聞き悪いなぁ。普通のことじゃない?恋人に〝浮気したら許さない〟って言っただけだよ♡」

 紗英の邪気のない笑顔と、言ってることのちぐはぐさに、怖くて震えが止まらない。

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