飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 直後に目の前が砂嵐に覆われた。


「邪魔しちゃ、だめ~」


 紗英の無邪気な声を合図に、強いめまいがしてザァッと真っ暗になる。

 
 ボフンッ


 聞き慣れた、少し懐かしい音が自分からした。


「……ゥ」


 体が重くて、動けない。

 必死に目を開けてみると、私は無造作に生えた草むらの中に突っ伏しているみたいだった。

 ぼやける視界の中で、こちらを嬉しそうに見ている紗英を見つけた。

 ……やけに大きく見える。

 そこで私は、黒い毛がびっしり生えてしまった自分の手を見て、確信した。

 猫に、された。


「あっは!やば!さすが凛さま、猫の姿もかわい~♡」


 紗英が嬉しそうに笑う。

 私はなけなしの力をふりしぼり、ふざけないで、元に戻してって叫ぼうと声を出した。


「っみゃぁ」


 ……⁉


「ン、ンニャ、ニャー、ニャァ」


 え? あれ?

 声が、思うように出せない……

 わきあがる嫌な予感に、心臓がバクバクと自分のものと思えないぐらい速くなっていく。
 
 
「っ、ニャー……ニャー……!」

 
 猫の声しか、出せない……⁉

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