飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ビックリした……。

 どうして中志津くんは私に聞いたんだろう……?

 私、夏宮くんとまともに話したのだって昨日が初めてだったくらいなのに。

 夏宮くんが私についてなにか言ってた、とか?

 
 疑問を解消できないまま先生がやってきて、授業がはじまった。

 当然誰かが夏宮くんのことを先生に聞いたけど、先生は「話は聞いてる。お前らは気にしなくていい」とだけ言って、授業を始めてしまった。

 そうは言ってもみんな授業に集中することなんかできなくて、小さな声で夏宮くんの噂を始める。

 駆け落ちしたんじゃないかとか、ストーカーに誘拐されたんじゃないかとか、実はスパイでどうのこうの、とか。

 冗談でも聞きたくない噂たちから自分の注意をそらしたくて、私は窓の外を見た。

 ざわざわとする私の胸の内とは反対に、まぶしいくらいに晴れ渡る空。

 まっさらな校庭に、熱くなり始めた太陽が降り注いでいる。

 ……夏宮くん、どこにいるんだろう。

 もし……もし太陽がなくなったら、この世界はどうなってしまうんだろう。

 


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