飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 こ、怖かったー……


 あのボス猫さん、人間から見たら少し大きい猫だなーぐらいだったけど、猫から見たらめっちゃ大きい。

 すっごい怖かった、本当に食べられちゃうかと思った。


 私はくたっとその場にへたり込んだ。

 あぁ……疲れた。暑い。喉乾いた。

 公園の水飲み場はやんちゃな子供たちがいて、イタズラされそうになってダメだったし……

 やっぱりその辺の人に甘えてなんとか頂戴するしかないんだろうか。


 ビルの隙間から夕日が差し込んで、私は目を細めた。

 遠くの方から同い年ぐらいの女の子たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。

 もう夕方か……今、何時だろう。

 連絡もなくいなくなっちゃって、みんな心配してるかな。

 
 疲れた足を何とか進めていると、繁華街に着いた。

 時刻は夕方6時を示していて、繁華街には制服姿の学生たちやスーツのサラリーマンたちでごった返している。


 そういえば、ここで猫の心に助けてもらったんだ。

 ……人って、こんなに大きく見えるんだな。

 あの日、心はこんな巨人みたいな、それも男の人相手に立ち向かったんだ。

 勇敢なアメショーの小さな後ろ姿を思い出して、胸がぎゅう、と苦しくなる。

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