飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「……あっ、見て。月寄さん」

「うわ、ほんとだ。やば」


 こうやってすれ違いざまに聞こえる生徒たちの声にも、もう慣れた。


「かっわ。美人。目の保養~」


 ……あざます。


「ちょっと前なんかやつれてたけど、また可愛くなったよね」


 それは、恋してるからかもしれません。


「最近ちょっと親しみやすい雰囲気になったよな」


 おっ。


「知ってる?実は月寄さんって運動も勉強もそうでもないらしいよ」


 いやぁ……へへ、面目ない。

 
「え⁉うっそ‼」

「むしろちょっとバカなんだって」


 うん、今のは悪口ですね。


「へー、そうなんだー……」


 1人の生徒の、私への興味が薄れた瞬間を目の当たりにして、ふ、と口角を上げながら廊下を歩いていく。

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