飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「ごめん、俺あんま時間ないからとりあえず来てもらっちゃってもいー?」

「え?」

 その人は私の手を掴んだまま歩き始めた。

 ……時間ないのに、人探し手伝ってくれようとしたの?

 違和感を覚えながらも、とにかく夏宮くんの居場所がわかってよかった、とホッとする。

「ここだよー」

 そう言って男の人が示したのは、雑居ビル。

 看板も何もなく、何かの事務所?お店?得体がしれなくて、不安にかられる。

 本当にここに夏宮くんが……?

 男の人がニコニコしながら「大丈夫だよー野々宮くんちゃんといるからおいでおいでー」と私の手を引っ張った。

 野々宮くんじゃなくて夏宮くんですって言おうとした、そのときだった。

 
「いってぇ!!」


 突然男の人が苦痛に顔を歪めて、私から手を離して(かが)んだ。


「⁉」


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