飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 紗英とずっと仲良しだったセイラは、何も知らなかったことが悔しい、絶対見つけて文句言ってやるって、一生懸命紗英のことを探してる。

 セイラは本当の紗英の姿を知らなかったけど……それでも二人にしかわからない、強い絆があったんだろうな。


 その時、教室の扉が開いた。


「あ、心」


 私はその名前に肩をビクッと大袈裟に跳ねさせて振り返った。


「おはー」


 教室に入ってきながら気だるげに手を挙げる、心。

 少し見ないうちに、背が伸びた気がする。


「あっつ」


 小さくそうぼやきながら、伏し目がちにボタンを開けてシャツをパタパタする仕草が妙に色っぽく見えて、ドキッとした。

 他の女の子たちも同じなのか、チラチラと視線を送っている。

 心はそれに気付くことなく、真ん中の列、一番後ろの自分の席に鞄を置いた。

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