飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「っ、おい……!」

「あっ、ご、ごめん……」


 申し訳なさそうに謝る男の子たちに、心はクハッと笑う。
 

「別に大丈夫だよ。みんな気にしすぎ。それより教科書のここ、授業でやった?俺今日絶対当てられるんだよなー」


 心が話題を変えて、その場の空気も元の日常的なそれに変わる。

 

 ……心と紗英が別れたって噂が流れた、その翌日から紗英が来なくなって

 心はみんなから同情の目を向けられるようになった。

 
 あの日から心は、遅刻や早退が増えて、学校を休みがちになった。

 ……そう。ずっと紗英を探してる。

 優しい心のことだからきっと、紗英がいなくなったことに責任を感じてるんだと思う。

 
 私は静かに席を立った。

 心配そうな顔をする響に、トイレ行ってくる、と笑顔で言付けしてから歩き出す。


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