飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 私は声に出して否定できないみんなの声にモヤモヤしたまま、自分の教室の扉を開けた。

 すると集まってくる、キラキラの視線。

 みんなの顔に『あっ、来た!』って書いてある。
 
 
「……おはよー」

 私はなるべく平静を装って、笑顔で挨拶した。

 すると、

「あっ、お、おはようごじゃ、」

「おおおおおおはよ、つ、つつつきよせさっ」

「っ……、」

 返ってくる、みんなの動揺。

 私はどうしたらいいか分からずに「……ふふ」と微妙な愛想笑いをするしかなくて、逃げるように自分の席へ向かう。

 その間も聞こえてくる、月寄さんに聞かれてはいけないはずの、声。

「あ〜だめだ、可愛すぎて目が潰れる」

「よかった~、もし隣の席とかだったら毎日緊張して腹くだしてたわ」

 私は自分の席について荷物を置き、椅子に腰かける。

 みんなの意識が私から別の話題に変わっていくのを感じながら、1時間目の教科書を開いて置き、両肘を机について組んだ手に自分のおでこをのせた。

 ひとり、鼻から息をフー……と、吐く。

 そして思う。

 

 高嶺の花キャラ、しんどい。


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