飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 私の動揺にまるで気が付かない彩人くんは、180センチはある身をかがめてドアをくぐるようにして中に入ってくる。

 私は彩人くんの後ろをついてリビングに戻りながら、血眼になって夏宮くんの忘れ物がないかをチェックする。

「そうだ、これ教授に貰ったりんご。 凛も好きだよね? 冷蔵庫に入れとくね」

「あ、うん! ありがとー」


 彩人くんがキッチンに向かう途中、


「え、叔父さん若くね?」

 
 小さく聞こえた、もう一人の住人の呟き。


 バッと振り返って見ると、リビングにひょっこり顔を出す夏宮くん。


「⁉、っ、‼」


 私は悲鳴を飲み込んで、こちらに気づかず冷蔵庫をあける彩人くんと、ひょっこり夏宮くんを交互に見ながら、大急ぎで夏宮くんを奥の部屋に押し戻す。

「ちょっ、だ、だめだよ出てきちゃ!」

 極小声で夏宮くんをしかりつける。

「だって気になるじゃん。凛の世話になってる人。つかなんで隠れなくちゃいけないの?」

「だめだよ、なんて説明したらいいかわかんないし、ここペット禁止だし!」

 男の子と暮らしてるなんて知ったら、彩人くんは卒倒しちゃいそうだ。

「彼氏です♡って紹介してくれてもいいよ?」

 夏宮くんが可愛く笑って小首をかしげる。

「かっ……⁉ 出来るわけないじゃん! てか彼氏じゃないし! とにかくいい子に隠れてて……!」

「てか叔父さんがあんな若くてイケメンなんて聞いてないんだけど。まさか凛の初恋とか言わねぇよな」

「え⁉」

 心臓がドッキーンと飛び跳ねた。

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