飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「あ、(しん)!」


 クラスの男の子が言って、みんなが教室の後ろ扉に注目した。

 私も例にもれず目を向けて、あ、と思う。
 

「おっはー」


 茶色がかったサラサラの髪、気だるげな佇まい。

 大きめの目には二重の線がくっきり入っていて、スッと伸びた鼻も薄めの唇もバランスよく配置されている、つまり、イケメン。

 屈託ない笑顔とともに力の抜けた挨拶を返した男の子の名前は、夏宮(なつみや) (しん)くん。

 来た瞬間にみんなの視線が注がれる、というのは私と同じでも、みんなの見る目が全く違う。

 それはまるで降り続いていた雨がやんで、太陽が雲間から顔を出したときみたいな、そんな晴れやかな表情。
 
 みんなの顔には、それが浮かんでいる。
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