飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「おっせーよ、心!今日ははやく集まってみんなで攻略すすめようって話してただろ!」

「ごめんごめん、ちょっと急用で」

 男の子たちに肩を組まれながら自分の席に向かう夏宮くんは、口の隅に八重歯をのぞかせて笑っている。

 その笑顔は誰もが怒る気をなくしちゃいそうな、誰もが彼のことを好きになっちゃいそうな、邪気のない笑顔。

「俺は見たぞ~(しん)~!ほかのクラスの女子と二人で部室棟の裏の方に行くのを見~た~ぞ~!」

「え⁉︎マジ⁉︎また告られたの⁉︎」

 ざわつくクラスメイトを構うことなく、夏宮くんは表情を変えずに「んー?」と流して教科書や筆記用具を片付けていく。

「おい~なんで心ばっかモテんだよ~」

「うーん、やっぱ顔かな」

 夏宮くんが顎に手を添えてキメ顔で言って、それに男子たちが目を細める。

「うーわ、ムカつく」

「ほんとに顔がいいからムカつく」

「こいつシメようぜ。かかれ!」

「あはは!やめろよ!」

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